“データのブラックボックス”を脱却。「ワンチーム」体制で切り拓いた、Dr.stretchのデータ駆動型マーケティングと高速PDCAの実現

株式会社nobitel

左から結城 景、森 競一、寺本 敬太(敬称略)

世界8カ国で300店舗を突破し、急成長を続けるストレッチ専門店「Dr.stretch」。事業拡大の裏で起きていたデータのサイロ化や自社リソースの不足を解決し、顧客データをビジネスに還元すべくCDPを導入しました。本記事では、CDPによって実現した年間約200本もの施策自動化や日次でのKPI管理について、プロジェクト責任者の結城様と伴走支援を行ったHiveIQメンバーに対談形式で当時のリアルな舞台裏を伺いました。

株式会社nobitel

結城 景

/

執行役員

プロジェクト責任者として本データ統合・マーケティング高度化を牽引

HiveIQ

寺本 敬太

/

CBO & Data Business Consultant

本プロジェクトでは、プロジェクトマネジメントを担当。

森 競一

/

データエンジニア

本プロジェクトでは、要件定義〜実装・運用支援を担当。

Index:

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プロジェクト概要・背景

―― まず、今回の取り組みを始めた背景について教えてください。

結城

最大の目的は、事業拡大に伴って蓄積されたデータを起点に「売上最大化」「損益適正化」「LTV向上」を実現することでした。おかげさまで事業は順調に拡大し、顧客データもどんどん増えていたのですが、データが各システムにサイロ化・分散されており、ビジネスに活用できていないという強い課題感がありました。今後さらに事業を拡大していくためには、顧客の解像度を上げ、データを活用して収益性を高めていく必要があります。そこで、Treasure Data(以下、TD)の導入を決定しました。

nobitel結城氏

―― 導入を決めたものの、社内のリソース面で大きな壁があったと伺っています。

結城

いざ導入を進めようとした矢先、自社システムのデータ構造を深く理解していた主要メンバーの退職等もあり、システムが事実上の「ブラックボックス状態」になってしまったんです。既存システムのドキュメントも残っておらず、「As-Is(現状)」を誰も正確に把握できていない状態からのスタートでした。さらに、ビジネスサイドにもSQL等のデータ抽出スキルを持つ人材が不足しており、自社単独でこのプロジェクトを推進し、導入後の実運用に乗せることに対して不安を抱えていました。

―― そのような困難な状況下で、HiveIQをパートナーに選ばれた決め手は何だったのでしょうか?

結城

HiveIQさんを選んだ理由は大きく2点あります。1点目は、当社のブラックボックス化した複雑なデータ構造を紐解き、TDを構築・運用できる豊富な実績と技術力を持たれていたこと。2点目は、データ統合の先にある事業の損益適正化や売上最大化のために、将来実現したい「需給予測」の領域で深い知見と実績を有していたことです。単なるシステム構築ベンダーではなく、未来のビジネス成長まで見据えて伴走してくれるパートナーだと考え、お任せすることを決めました。

プロジェクト体制

―― プロジェクトはどのような体制と役割分担で進められたのでしょうか。

結城

我々発注者側が「要件定義(方針決定)」「情報提供」「最終確認」を担い、HiveIQさんに「プロジェクト全体の進行管理(PM)」および「TDの構築」を全面的にリードしていただく体制としました。社内のリソースおよびデータ活用のスキルが不足していたため、必要な情報の引き出しを含めて推進を全面的にリードしてもらいました。

コミュニケーション面では、「全体定例」や「テーマ別の分科会」に加え、「Slackによる非同期コミュニケーション」を適切に組み合わせてスムーズな意思決定と認識合わせを行いました。対会社というよりかは「このプロジェクトの1チーム」のような感覚でやらせていただけたことが一番大きかったですね。

結城

HiveIQさんは、我々が判断しやすいようにクローズドな聞き方をしてくれたり、タイムリーな調整が必要な際には臨時ミーティングにも柔軟かつ迅速に対応してくれました。一般的な外部ベンダーのような壁を感じさせず、まるで「自社の社内エンジニア」と会話しているかのような近い距離感で伴走してくれたことが深く印象に残っています。

HiveIQ森氏とnobitel結城氏

泥臭いデータ統合の真実

―― 実際の要件定義やデータ統合設計において、特に苦労された点はどこでしょうか。

結城

当社のビジネス特性上、顧客がもちろん大事なのですが、同時に店舗ビジネスであり、トレーナーに紐づいて業績が左右されるビジネスモデルです。そのため、一般的なCDPが想定する「顧客軸」の統合だけでなく、管理・運営面において「店舗軸」「トレーナー軸」を掛け合わせた多角的なデータ構造をどう設計するかが、初期の大きな壁となりました。これら3つの軸のデータ粒度が全くバラバラだったんです。

寺本

仕様書が不足している場合もあり、まずは過去の複雑なSQLの全容を解明する必要がありました。単にそのままTDへ移植するのではなく、既存のクエリを一つずつリバースエンジニアリングし、不要な処理を削ぎ落として新DBの特性を活かした「処理効率の良いクエリ」へと再定義する作業を並行して実施しました。

既存ツールでもともと集計していた結果と、TDで構築したロジックの数値の誤差を合わせる作業は非常に泥臭いものでした。データは同じはずなのに、バッチ処理のタイムラグ等で「何万件中、1件だけズレる」といった事象が発生し、それを一つひとつ確実に対面や分科会で潰していく作業は、本当に時間をかけてチーム一体となってやり切った部分です。

HiveIQ寺本氏

実運用フェーズへの壁

―― システム構築後、実運用に乗せるまでにも壁はありましたか?

結城

構築完了後にも「現場のデータ抽出スキルの不足」という壁に直面しました。顧客軸のデータは標準機能でマーケティング活用に乗せられたのですが、店舗・トレーナー軸の分析などはツールの標準機能では完結せず、SQLの記述が必要だったんです。社内にSQLを扱える人材が限られていたため、自分たちで必要なデータを取り出すことが想定外に難しく、活用の手前で立ち止まってしまいました。

寺本

現場のメンバーが都度SQLを書かなくても済むように、頻繁に取り出しが発生するデータや優先度の高いデータ抽出については、HiveIQ側で事前に自動で集計される仕組みを構築しました。Audience Studio上のフォルダ階層を業務フローに合わせて整理し、セグメントやカラムの名前を現場の共通言語である日本語へと徹底的に書き換えました。非エンジニアである現場のマーケターが「これなら自分でも触れる」と思えるレベルまで、システムと人間の間に入る「翻訳者」の役割にこだわりました。

成果・効果

―― 取り組みの結果、どのような成果が得られましたか?

結城

大きく2つの成果を実感しています。1つ目は、マーケティング施策の圧倒的なスピードアップと自動化です。TDの機能を活用し、LINEを中心としたCRM施策を本格的に回せるようになりました。具体的には、2回目来店促進、予約落ちフォロー、再新規フォローなど、昨期だけで約200本に及ぶシナリオを設計・運用することができています。手軽にABテストを回せる環境が整ったことで、適切なタイミングや内容をあらかじめ検証でき、リスクを払拭しながら高速で施策を展開できています。

結城

2つ目は、経営管理・現場のPDCAサイクルの劇的な高速化です。これまでは週次でのデータ集計が基本で、1週間前の情報を次の週の水曜日頃に確認するサイクルでした。しかし現在は、全KPIが網羅されたシートが日次で更新され、「朝にはデータが更新され、午後には全店舗でその日の数値を確認し、即座にアクションを決める」という日次のPDCAが回っています。アドホックなデータ分析も、これまでは1日〜3日かかっていたものが数時間で提示できるようになり、現場での意思決定も早くなっています。

今後の展望

―― 今回構築した基盤をもとに、今後挑戦したいテーマを教えてください。

結城

まずは、当初からの目標である「需給予測の高度化」にいち早く取り組みたいと考えています。予測データを連動させる形で、「シフト最適化(トレーナー配置)」や、空き枠のスコアリング結果を踏まえた「空枠サジェスチョン(予約枠の効率化)」へと展開していくイメージです。データを使って施策を打つだけでなく、現場のオペレーションそのものを変革していくところまで活かしていきたいですね。また最近では、Treasure AIに、HiveIQさんが構築したワークフローの構造を分析・学習させる取り組みも進めています。

寺本

今後は、AIエージェントが一定のガードレールの中で、多少雑なプロンプトでも期待値を超える結果を出せるように、プロンプトの整備やフォーマットのノウハウ提供などをお手伝いできれば、さらにお互い楽しい取り組みになるのかなと思っています。

nobitel結城氏とHiveIQ寺本氏

実践者からのアドバイス

―― 最後に、これからデータ統合やマーケティングの高度化を目指す企業へアドバイスをお願いします。

結城

リソースや体制が完璧に揃った状態でプロジェクトを立ち上げられる企業は少ないと思います。だからこそ、自社で「できること・できないこと」を率直に自己分析して開示し、そこに寄り添って足りない部分を補ってくれるパートナーを選ぶことが成功の鍵です。仕様書の不備やSQLスキル不足など多くの課題を抱えたスタートでしたが、状況を理解し、ルールに縛られず柔軟に泥臭く伴走してくれたHiveIQさんがいたからこそ、今の成果に辿り着けました。

寺本

「仕様書通りにデータが綺麗に揃っている企業」は、ほぼ99%存在しません。過去の複雑なSQLの解読や、泥臭い移行データのトランザクションレベルでの整合性確認が必ず発生します。この泥臭い作業から逃げず、一緒にSQLを読み解き、データの品質を担保するまで伴走してくれるパートナーを選ぶことが重要だと思います。

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